インサイトの主な開発対象

 

線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)

Incyte Corporation(インサイト)は、FGFR阻害剤の開発に取り組んでいます。

FGFRは腫瘍細胞の増殖・生存や遊走、また血管新生において重要な役割を果たします。FGFRにおける変異・転座・遺伝子増幅活性は、さまざまながんの発現と密接に関連しています。FGFRは抗がん剤開発にとって重要な標的です。インサイトでは、固形がんや8p11骨髄増殖性腫瘍(MPN)におけるFGFRを研究しています。

ヤヌスキナーゼ(JAK)

インサイトは、JAK阻害剤の開発に取り組んでいます。

非受容体チロシンキナーゼのJAKファミリーは、多種多様なサイトカインや増殖因子受容体と関連しています。

ヤヌスキナーゼ・シグナル伝達兼転写活性化因子経路(JAK-STAT経路)を介するシグナル伝達の過剰活性化は、MPNと呼ばれる希少血液がんをはじめとするさまざまな種類のがんや、移植片対宿主病(GVHD)などといった重篤な免疫疾患の原因とされています。

また当社は、アトピー性皮膚炎、白斑、膿疱性表皮炎など、さまざまな皮膚疾患におけるJAK阻害作用についても研究しています。

プログラム細胞死(PD)-1・プログラム細胞死-リガンド(PD-L)1

インサイトは、抗PD-1抗体、およびPD-L1の低分子阻害剤の開発に取り組んでいます。

PD-1は、T細胞をはじめ複数の免疫細胞に発現するタンパク質であり、腫瘍による免疫抑制の重要なチェックポイントとして作用します。PD-L1はリガンドであり、さまざまな細胞で発現します。PD-L1は、インターフェロン-γへの曝露によって腫瘍微小環境に誘導されます。

PD-1・PD-L1軸を遮断して下流へのシグナル伝達を阻害的に低減させ、最終的には抗腫瘍免疫を増加させる可能性があるとされる、PD-1・PD-L1に対する抗体やPD-L1の低分子阻害剤について、研究を行っています。

ホスファチジルイノシトール3キナーゼデルタ(PI3Kδ)

インサイトは、PI3Kδシグナル伝達阻害剤の開発に取り組んでいます。

PI3Kは、ἀ、ẞ、δの3つのアイソフォームを持つ脂質キナーゼです。PI3Kシグナル伝達には、細胞の生存、増殖、タンパク質合成、およびアポトーシスの阻害に対し、多種多様な下流効果があります。PI3K 活性の調節不全に陥ると、腫瘍細胞の生存が促進されるおそれがあります。

PI3Kδの亢進は、B細胞悪性腫瘍の増殖と生存に至る重要なファクターであることが分かっています。

さらに、PI3Kδの阻害は、B細胞や抗体によって生じるさまざまな疾患を治療するメカニズムとして、がん領域を超えた可能性を秘めていると考えられます。